カーディフシティとウェールズサッカー協会での経験を日本サッカー界に還元する

平野 将弘
イギリスのUniversity of South Walesにてサッカー指導、サッカーコーチングを専攻しUEFA Bライセンスを取得
プレミアリーグのカーディフシティ女子チームコーチ
カーディフアカデミーのパフォーマンスアナリスト
ウェールズサッカー協会の分析インターン
note : https://note.mu/footycoachjp

高校からイギリスのロンドンに留学し、大学ではサウスウェールズ大学のサッカーコーチングコースを専攻し、首席で卒業した平野将弘氏。UefaBライセンスも取得し、サッカー指導者としての自らの経験と分析に対する考えを活かし、サッカー誌からの執筆依頼も受ける23歳の若者を直撃した。
彼は何を求め留学し、そしてこれから先の人生でどう舵を切るのか。

※平野将弘氏が登壇された『ふっべじ vol.2』は以下をご覧ください。


坂井
まずは、平野さんのサッカーキャリア(大学に入るまで)を簡単に教えてください。

 

平野
幼稚園の年中からサッカーを始めて、小学生の時はヴェルディやアントラーズのスクールに入りながら地元のチームでプレーしていました。
しかしそのチームではお父さんコーチの子供達が明らかに試合に出るなど指導者には恵まれませんでした。
下手ではなかったのですが、全く試合に出ることができずサッカーが嫌いになりそうでした。
中学では部活動でサッカーをやっていましたが、そこで亀山先生という素晴らしい先生兼サッカー指導者に出会うことができ私のサッカー愛が再熱したのだと思います。
彼の影響も受け、中学時代にサッカー指導者を志し、高校でイングランドに留学してFAライセンスのレベル1と2を取得しました。

 

坂井
早くも突出すべき行動力があらわれましたね。
高校からイングランドに留学してFAライセンスを取得したのは、イングランドでは16歳から資格が取得できるからでしょうか。

 

平野
はい。そういった理由もあります。
欧州の最先端で学ぶことは早ければ早い方がいいと思いましたし、単純に小さい頃からプレミアリーグが好きでそこで将来働く為の近道にもなると思いました。
語学の面でも英語力を伸ばしたかったという点もあります。

 

坂井
ありがとうございます。
大学留学先として、USWを選ばれた理由や専攻科目を教えてください。

 

平野
USWを選んだ理由はたくさんありますが、主要な理由は3つあります。

1つ目は何と言ってもイギリスの大学で唯一UEFA Bライセンスの受講の機会が設けられていることです。
そのBライセンスも合格率が70%ほどなのでやり甲斐がありました。

2つ目はそのウェールズサッカー協会のUEFAライセンスの評判の良さです。
実際に理論的にもよく体系化されていて、言語化された独自の用語を使用したり、常にコース内容がアップデートされたりと、このUEFA Bライセンス講習会で多く学ぶことがありました。

そして3つ目は現場との強固な繋がりです。
USWサッカーコーチング科のウェブサイトを見れば明らかですが、ウェールズサッカー協会、カーディフシティー、スウォンジーシティーをはじめとするプロの世界でもトップの関係者やクラブとの繋がりは魅力的でした。
なぜならサッカー界では人との繋がりが非常に大切だからです。実際にまだ日本人が未開拓だったウェールズサッカー界にて第一人者として多くのプロフェッショナルな関係や繋がりを築くことができました。

※参照:『University of South Wales ~Football Coaching, Development and Administration~

坂井
そうですよね。
私も平野さんに紹介頂いたUSWの教授に大学説明と校内見学をしてもらいましたが、大学と外部サッカー機関との強固なパートナーシップ、システムには驚きました。
大学の施設(環境)や授業でこれは凄いな!役に立った!というのはどんなことですか?

 

平野
施設に関しては国内の大学で唯一FIFA プロの基準を満たす室内練習場やその練習場に様々なアングルで撮影、分析できるように設置されたカメラでしょうか。
カーディフシティーのアカデミーのオフィスと練習場が大学内にあるのもユニークですね。
授業に関しては元ミドルスブラやエヴァートンでコーチをしていたDave Adams によるマスタークラスが印象深いです。
パフォーマンス分析の授業ではハドル社のスポーツコードを使って当たり前のように行うので日本との環境の違いが今振り返ってみると日常で多くあることに気づきます。

 

坂井
確かに大学敷地内にカーディフシティのアカデミーのオフィスがありましたね。
選手たちも大学のジムでトレーニングをしていました。
パーフォーマンス分析とは具体的にどのような観点から何を目的に行うのでしょうか。

 

平野
パフォーマンスを客観的に評価して、コーチ陣にバイアスのないデータや事実を送る為のプロセスで重要な役割を果たすものでしょうか。
客観的に分析できることで選手の状況判断や意思決定、プレーのパフォーマンスが向上。
それに従ってチームのパフォーマンスや結果の向上につながる。
ビデオ撮影したり、コーディングしたり、レポート作成したり、スタッツやデータを取り入れたり、分析して纏めたものをフィードバックしたりなど多くのタスクがあります。
また分析の種類を見ても、対戦相手、自チーム、審判、練習、コーチ、トレンド分析など多く存在しますね。

 

坂井
各選手の運動量やスタッツを出すためのデータ収集と思われている方も多いようですが、個人の分析だけでなくチームとして改善できるものは全て対象になるようなイメージですね。

平野さんが大学を選んだ理由の一つ、UefaBについてですが、UefaB (FAW level3)ライセンス取得までの経緯を教えてください。

 

平野
大学1年の時にFAW UEFA C級(ユース)を取得しました。
ただしFAW UEFA B級を取得するにはC級(シニア)を持っていなければいけないので、ユースからシニアへのライセンスのトランジション講習を受けました。

Bライセンスでは理論、実践、オンラインモジュールなどがあり、講習会に全て出席、オンラインモジュールの課題を提出&合格そして最後の実技試験を合格すればB ライセンスが取得できます。
ここでは主観的な分析、コーチ監督が行う戦術分析のモジュールが2つ出てきました。Developing the expert eyeとunit analysisです。
この2つのモジュールはとても興味深く、ウェールズサッカー協会らしい内容でした。

 

坂井
ウェールズサッカー協会のインターンではどのような業務をされていたんでしょうか。

 

平野
ウェールズではregional campという日本でいう年代別代表の合宿みたいなものがあります。
そこの2004年生まれのカテゴリーの分析を担当しました。
坂井
ありがとうございます。
平野さんはカーディフシティでも指導をされていましたが、大学やウェールズサッカー協会で得た知見を実践の場にアウトプットする素晴らしい機会だったかと思います。
まずはカーディフシティ女子チームについて教えてください。

 

平野
フルタイムのスタッフよりも私のように大学や大学院に通いながら仕事をしているスタッフが多いのが特徴的でしょうか。
分析チームにはカーディフメトロポリタン大学というパフォーマンス分析で有名な大学から1人がチームにいます。
彼の能力や知識が足りずコーチ陣が不満を持っていたので私に分析コーチのオファーがシーズン途中にきたのはここだけのお話としましょう(笑)

 

坂井
そんな裏話があったんですね!(笑)

 

平野
カーディフ女子はプロクラブではないので、選手もプロ選手ではないですが、ウェールズで一番強いリーグでUCL女子に出ているカーディフメトロポリタン大学やスウォンジーらと同じリーグで戦っています。
選手のレベルはウェールズ代表のサブのGKがいたり、元年代別の代表に選ばれてきた選手は何人かいます。
去年はリーグ戦3位でしたが、今シーズンからは監督も変わり、ライバルチームからリーグ屈指のウィンガーを補強したり、大規模なトライアルを行い複数の若く有望な選手と契約したので今シーズンが楽しみです。

 

坂井
女子サッカーはまだまだ変革期ですので、チャンピオンズリーグの出場権を獲得できれば、選手だけでなく、指導者側の世界も大きく変わりそうですね。

それでは大学の敷地内にある、カーディフシティアカデミーチームについて教えてください。

 

平野
アカデミーからパフォーマンス分析が利用されています。
さらにアカデミーで働くコーチも分析され、自身のコーチングのbehavior(行動・言動・立ち振る舞い)の客観的なレビューをすることができます。
コーチの質の部分での向上もテクノロジーや最先端の方法論を使って行われます。

カーディフはより個にフォーカスして育成年代のトレーニングを行います。
お隣のスウォンジーはよりグループ戦術のところに力を入れていて、その違いが興味深いです。
優秀な大学生は既にアカデミーのコーチを務めていたりと日本との環境の違いも見受けられました。

 

坂井
コーチ自身の分析はおもしろいですね。
指導者資格も日本より2年も早く取得でき、優秀な人材は年功序列関係なく実践の場に出れる機会がある。
これは指導者の成長の違い、すなわち日本と海外のサッカーにおいて大きな差が生じていますね。

日本のアカデミー世代のサッカーを見に行くと、踏ん反り返って怒鳴り散らしてる監督・コーチがいますが、あれは減点ですか?

 

平野
ケースバイケースですが、怒鳴るというのはあまり好ましくないですよね。
その怒鳴りがポジティブでチームを鼓舞する意図があれば良いと思います。
ネガティブで選手を貶したりするのはかなりの減点になりますし、私がカーディフアカデミーのコーチの分析をする中で怒鳴っていたコーチは1人もいませんでした。

 

坂井
その通りだと思います。
怒鳴られて育った選手が大人になって指導者になると、教え方が分からず最終的に力で抑え込もうとする傾向が見受けられるように思います。

最後に、平野さんの将来の目標を聞かせてください。

 

平野
今はJ1、J2のU15より上のカテゴリーで指導者をやりたい。
これが短期目標として一番強く思っています。
確実に時代やトレンドが日本サッカー界でも変わってきているので、私の欧州の最先端やトップでの経験、欧州トップクラスのサッカーコーチング科の大学で学んだアカデミックな知識を生かせる、またそれらを必要としているクラブでやりたいという希望はあります。

日本サッカーの特徴、文化や環境など全てを鑑みた上で私の持っているものを還元し、愛する日本のサッカー界に貢献できたら幸いです。

中学2年生の時に立てた目標が指導者としてUCLのタイトルを取ることでした。その目標を達成するために、近い将来再び欧州に戻ることになるでしょう。

 

坂井
ありがとうございました。
高校から含めて6年間で学ばれてきたコトは必ず日本サッカーに還元できると思います。平野さんを求めているJクラブは間違いなくあると思います。
そしてその先には、中学2年生の頃から考えられていた目標、ビッグイヤーを掲げる平野さんをぜひ見てみたいです!

若くして海外を経験するサッカー選手が増えている中、こうして指導者として海外の最先端指導を学んでくる若者も増えてきている。海外と日本では指導設備・環境は違うものの、指導に対する考え、アプローチ、実践の場、そして分析と指導のPDCAを回せる逸材をJクラブをはじめとする日本サッカー界がどのように迎え入れ、化学変化を起こしていくのか非常に楽しみである。

平野さんが通う、サウスウェールズ大学の紹介記事は以下をご覧ください。


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